神戸大学 大学院理学研究科・理学部

模擬授業

2023年度模擬授業・講義タイトル

数学科 物理学科 化学科 生物学科 惑星学科

数学科
M1. 虚数と素数
 2乗して-1になる数は、1800年頃から少しずつ、研究で使われるようになります。 当時は数学者にとっても、その存在を認めることは簡単ではなかったようです。それがいつしか 数学では当然の存在になり、後に物理現象の記述にも虚数が役立つことが分かり、今では高校生 の皆さんも普通に学ぶようになりました。さてそんな虚数ですが、実は素数の持つパターンを 解明する上でも役に立ちます‥!
虚数と素数のそんな不思議なカンケイを紹介してみたいと思います。
講師 谷口 隆 (数学専攻・教授)
備考 講義
M2.反復法による解の近似
 複雑な対象を理解するため、それをより単純な要素で近似することは自然な発想です。 例えば、2の平方根という無理数は、慣れ親しんだ分数(有理数)によって近似されます。 ところで、皆さんご存じのように、二次方程式には「解の公式」がありました。そのような便利なツールに頼れない場合は、 まず方程式を近似的に解き、その極限を考えることがあります。これには反復法という方法を用います。 本講義では、その代表例であるニュートン法を紹介し、解の近似値を求める問題を数列の問題に帰着させて考えます。 また、ニュートン法のアイディアは実はとても強力です。それが現代数学で用いられる例として、 非線形方程式の研究におけるナッシュ・モーザーの定理に触れたいと思います。
講師 檜垣 充朗 (数学専攻・准教授)
備考 講義
M3.遠近法と射影幾何
 「遠近法」(または透視図法)は、遠くのものほど小さく描く絵画手法です。 画 面に奥行きを持たせる手段として、今では CGなどでも当たり前の方法となってい ますが、普通に用いられるようになったのはルネサンス期以降のことでした。例 えば、有名な「最後の晩餐」は完璧な遠近法で描かれています。この講義では、
ダ・ヴィンチやパスカルなどの天才たちと知恵比べをしながら、遠近法の原理 と、そこから生まれた少し不思議な幾何学=「射影幾何」について学びます。
講師 山田 泰彦 (数学専攻・教授)
備考 講義,定規やコンパスがあれば自身でも作図しながら楽しめると思います。
M4. 調査結果の統計学的な見方
 実世界の様々な問題を統計学により解決するためには、
  • 「問題となっている分野の勉強」
  • 「統計学の勉強」
  • 「数学の勉強」
の3つが必要となります。本講義では、統計学が実際に使われている例として、 新薬の開発に使われる統計手法(統計的考え方)を紹介します。
講師 青木 敏 (数学専攻・教授)
備考 講義
物理学科
P1.液体窒素を使って極低温の世界で遊んでみよう
 身の回りにある空気は窒素と酸素で出来ています。普段の生活では気体の窒素も77K(摂氏マイナス196度)では液体です。物を極端に冷やすと日常とは違った世界が広がっています。高温超伝導体を知っていますか?液体窒素につけると電気抵抗ゼロの超伝導状態になり,磁石がその上に浮きます。マイスナー効果という現象です。手品ではありません。その他、身近の物を液体窒素につけて遊んでみましょう。普段の生活では見られない未知の体験が待っています。
講師 大久保 晋(物理学専攻、分子フォトサイエンス研究センター・准教授)、
藤 秀樹(物理学専攻・教授)、菅原 仁(物理学専攻・教授)
備考 講義と実演 (1クラス最大で50名まで)
P2.超伝導
 金属などを低温まで冷やすと電気抵抗が突然ゼロになってしまうことがあります。これが超伝導とよばれる現象で、超伝導を引き起こすメカニズムは素粒子の性質とも関連した興味深いものです。応用面では室温で超伝導を示す物質の発見が待たれており、その探索の状況についてもお話します。
講師 久保木 一浩(物理学専攻・准教授)
備考 講義
P3.素粒子と宇宙
 科学技術の発展とともに、我々は少しずつ極微の世界、また遙か彼方の宇宙の様子を見ることができるようになりましたが、「物質の根源は何だろうか」、「我々の住む宇宙はどうなっているのか」という2千年以上も昔から問われ続けられている人類共通の素朴な疑問に、我々は未だに明確な解答を見つけることができません。これにチャレンジしているのが素粒子物理です。素粒子と宇宙というのは、一見両極端であるように感じられるかもしれませんが、実は、宇宙の始まりを理解するためには、素粒子のことをもっともっと知る必要があるのです。皆さんも自然の神秘についての素朴な疑問を発してみませんか。 この授業では、神戸大学の素粒子実験グループが進めている研究、「大型加速器を使った素粒子実験」、「初期宇宙の痕跡を探るための宇宙線観測」を中心に、我々がどんな謎に迫ろうとしているのか紹介します。
講師 藏重 久弥(物理学専攻・教授)、山崎 祐司(物理学専攻・教授)、
竹内 康雄(物理学専攻・教授)、身内 賢太朗(物理学専攻・准教授)、
越智 敦彦(物理学専攻・准教授)、前田 順平(物理学専攻・講師)、
鈴木 州(物理学専攻・助教)
備考 講義
化学科
C1.分子の結合と反応
 分子は原子同士がつながって出来ており、そのつながり方は自然界の法則に支配されています。 また、化学反応はその原子同士の結合が切れて、別の場所で新たな結合ができることで進んでいきます。 安定な分子を反応(変形)させるにはエネルギーが必要であり、そのエネルギーは熱であったり光であったりします。 本模擬授業では,こういった分子の構築や光を使った反応のメカニズムについて解説します。
講師 和田 昭英(化学専攻・教授)
備考 講義
C2.物理化学の基礎の基礎
 毎年4月に化学科に入学したばかりの1年生に講義する「物理化学基礎」という科目のはじめの部分を体験してください。 高校の化学と大学の化学のあいだには大きなギャップが存在します。「現象を微分方程式で記述する」ことを習得しないかぎり このギャップを越えることはできません。ギャップを乗り越える手助けをすることが物理化学基礎という授業の目的です。 高校の数学で習う微分と積分が少しだけでてきますが、まだ習っていなくても大丈夫です。
講師 大西 洋(化学専攻・教授)
備考 講義
C3.脱炭素社会を正しく知ろう ~「水素を使えばいい」は本当か?~
 二酸化炭素濃度の上昇により地球温暖化が進行しています。そんな中、「脱炭素社会」「水素社会」という言葉を耳にするようになってきました。 二酸化炭素を放出しないためには炭素原子が入っていないものを燃料にすればよい、特に水素は燃焼させても水が出るだけなので最適という考えです。 果たしてそれは本当でしょうか。
 この問いにしっかりと答えるためには、化学的な観点からエネルギーについて正しく理解する必要があります。 この授業では、そんなエネルギー問題の現在と未来について紹介したいと思います。
講師 松原 亮介(化学専攻・教授)
備考 講義
C4.光合成生物の光エネルギー利用戦略
 太陽光は光合成反応のエネルギー源ですが、過剰に降り注ぐと細胞破壊の原因になります。 光合成生物は、刻一刻と変化する光環境に応じてエネルギーを使う方法と捨てる方法を使い分けています。 使うか、捨てるか、エネルギーの流れは100億分の1秒(100ピコ秒)以内に決定づけられます。 この授業では、タンパク質内で起こるエネルギーの流れをピコ秒の時間分解能で追跡した結果を元に、光合成生物の環境応答について解説します。
講師 秋本 誠志(化学専攻・准教授)
備考 講義
生物学科
B1.昆虫からみた世界
 地球上の全動物種のうち、実に70%以上を昆虫が占めています。彼らは、私たち人間とは全く異なる独自の生存戦略で進化してきた動物です。 昆虫は体も小さく、神経細胞の数は哺乳類の1/1000程度しかありませんが、それぞれの環境に適応した様々な感覚を獲得することで、 地球上に繁栄してきました。彼らは、紫外線、偏光、超音波など、人間には知覚できない様々な情報を環境から検出して、 それをうまく自分たちの生活に巧みに利用しています。講義では、昆虫たちがこの世界をどのように見て、感じているのか、 そしてそこから生み出される多様な行動について、感覚器や脳などの神経系の観点から解説し、我々の神経系との違いとその利点について解説します。
講師 佐倉 緑(生物学専攻・准教授)
備考 講義
B2.動物の組織・器官を作るメカニズム
 この世界には多種多様な動物が存在していて、その形や生活環境は実に様々です。動物の個体は全て一つの細胞である受精卵から始まり、 細胞分裂を繰り返し、器官や組織をつくりあげてゆきます。この授業では陸上を走ったり、水中を泳いだり、空中を飛んだりするために使われる動物の手足 (翼)に着目して、これらの器官がどのようにつくられるのか、そしてそこに関わる遺伝子の働きについて解説します。 さらに動物種間で、遺伝子によるメカニズムの共通点や相違点が手足のかたちにどのように関係しているのか見ていきましょう。
講師 松花 沙織(生物学専攻・助教)
備考 講義
B3.植物の陸上化― 陸上植物の祖先シャジクモ藻類から見えてくるもの
 水中生活をする緑藻類から陸上植物への進化は、植物進化において中枢となるイベントです。 これまでの研究の結果から、「シャジクモ藻類」と呼ばれる緑色の藻類が陸上植物に最も近縁だと考えられています。 この授業では、はじめにシャジクモ藻類の基本的な特徴を解説した後、シャジクモ藻類から陸上植物への進化を「生活環と体制の進化」に焦点を絞って紹介します。
講師 坂山 英俊(生物学専攻・准教授)
備考 講義
B4.葉緑体ドロボウから紐解く細胞内共生の進化
 水圏生態系を支える光合成性の「藻類」は、他の生物を食べていた真核生物があるとき他の光合成をする真核生物を細胞内に住まわせることに成功したことで誕生しました。このような進化のイベントは複数回起こっていると知られていますが、どのように共生が進んだのかについては謎が多く残されています。本講義では、光合成生物になる途中の段階であると考えられる「盗葉緑体」現象を示す渦鞭毛藻、その名もヌスットディニウムの研究をご紹介し、細胞内共生の進化プロセスについての最新の知見を解説します。
講師 大沼 亮 (生物学専攻・講師)
備考 講義
惑星学科
W1.今後西日本で起こりうる地震について
 西日本は、東日本に比べて、地震の発生頻度が低く、西日本に住んでいると、ともすると地震のことを忘れがちです。 この授業では、まず、地震のメカニズムを理解する上で必要となる地震学に関連した専門的事項について説明します。引き続き、本題である、今後西日本でどのような、被害をもたらすような大地震が起こりうるかについて、地震を、1)活断層で起こる地震、2)未知の活断層で起こる地震、3)スラブ内地震、4)海溝型巨大地震、の4つのタイプに分類し、それぞれの地震について過去の事例をふまえてお話しします。
講師 吉岡 祥一 (惑星学専攻、都市安全研究センター、惑星科学研究センター・教授)
備考 講義
W2.海洋掘削が明らかにする地球のヒミツ
 日本の地下でも起こっているプレートの沈み込みは、「地球が生命の暮らせる星」であるために大きな役割を果たしています。一方で、そこでは大きな地震や火山噴火が起こり、私たちの脅威にもなっています。海洋は、地球表面積の70%以上を覆っており、私たちがまだ知らない地球の情報をたくさん保持しています。これを探るために、世界中の研究者が集まって国際的な海洋掘削探査が行われており、日本からも「ちきゅう」が参加しています。 この授業では、最近行われた航海の様子を紹介するとともに、掘削によって明らかになった地球のヒミツを紹介します。
講師 山本 由弦 (惑星学専攻、海洋底探査センター・教授)
備考 講義
W3.太陽系に広がる「宇宙」氷の世界
 氷は地球上だけに存在する特別な物質ではありません。太陽系全体を見渡してみると、ほぼ至る所に存在する普遍的な物質です。その「宇宙」氷は、氷でできた巨大氷惑星から小規模な氷河に至るまで、大小様々に形を変えて、私たちにその姿を見せてくれます。その「宇宙」氷の魅力を、惑星探査の話を交えながらお話しします。太陽系の宇宙氷天体を巡るグランドツアーに参加して、その魅力に一度触れてみませんか。
講師 保井 みなみ (惑星学専攻・講師)
備考 講義
W4.惑星天気予報:金星は今日も曇り、火星は砂嵐でしょう
 私たちに身近な天気予報は、地球の大気をコンピュータ上で再現することで実現しています。一方、金星や火星にも大気が存在し、地球とは異なる様々な大気現象がおこっています。本講義では、はじめに、大気をコンピュータ上で再現する方法を解説します。次に、金星や火星の大気現象とそれらの再現を目指した最新の研究を紹介します。こうした研究が進めば、将来「惑星天気予報」が実現するかも知れません。
講師 樫村 博基 (惑星学専攻・講師)
備考 講義

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