神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2020.06.17

生物学専攻の川井浩史特命教授,羽生田岳昭助教らの研究グループによる深所性アオサ類の新属Ryuguphycusを提唱する論文がEuropean Journal of Phycology誌に掲載されました.

 本研究チームが2016年に小笠原諸島の水深30?60mの海底から採集し,ボニンアオノリと名付けた, 高さ20cm程度になるアオノリに似た深所性の膜状の緑藻は,分子系統学的解析の結果,ハワイ諸島で潜水艇を用いた調査で水深80mの海底から採集され, 2016年にヤブレグサ属の新種Umbraulva kuaweuweu (アオサ藻綱,アオサ目)として記載された種と同種と考えられることが明らかになりました。
 ヤブレグサ属の基準種であるヤブレグサUmbraulva japonicaは,以前はアオサ類やアオノリ類と同じく,アオサ属(Ulva)の種として扱われていましたが, 一般にアオサ類より深い水深帯に生育し,深所での光合成に適応して獲得したと考えられているカロテノイドとしてシホナキサンチンを含んでおり,遺伝的にも独立していることから,現在ではアオサ属とは別属(Umbraulva)の種として扱われています。
 本種ボニンアオノリは今回の光合成に関連する色素の解析で,ヤブレグサ属と同様にシホナキサンチンを含んでいることが確認されましたが、ヤブレグサや一般的なアオサ属の種と異なり、α-カロテンや s-カロテンなどのカロテノイド色素を欠いています。 さらに、本種は分子系統学的解析の結果、アオサ属、ヤブレグサ属からは独立しており、電子顕微鏡による解析から生殖細胞の形成様式も両者とは大きく異なることが明らかになりました。 このため、本種は独立した属として取り扱うべきであるとの結論に達し、深い海の底にあるという竜宮伝説にちなんで新属Ryuguphycus (「竜宮の藻」の意)として取り扱うことを提唱しました。
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