神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2020.10.16

化学専攻の秋本誠志准教授,植野嘉文研究員らの研究グループが, シアノバクテリアの鉄欠乏状態に誘導される集光性色素タンパク質の発現機構と機能の解明に成功しました.

 岡山大学異分野基礎科学研究所の長尾遼特任講師、神戸大学大学院理学研究科の秋本誠志准教授、 東京都立大学大学院理学研究科の得平茂樹准教授らの共同研究グループは、 理化学研究所環境資源科学研究センターの堂前直ユニットリーダーらと共に、シアノバクテリア(注1) Anabaena sp. PCC 7120 の鉄欠乏状態において誘導される IsiAタンパク質の発現解析および時間分解蛍光分光法(注2)を用いた励起エネルギー伝達解析に成功しました。 この結果から、IsiAタンパク質が選択的な発現制御機構を持ち、光合成光化学反応に必要な励起エネルギー供給を担っていることが 明らかになりました。
 本研究成果は10月15日、欧州の科学雑誌「Biochimica et Biophysica Acta - Bioenergetics」にオンラインで掲載されました。
 本研究成果は、「鉄欠乏という貧栄養環境の中でいかにして光合成生物は耐え忍ぶのか?」、という問いに対して知見を与えるものです。光合成生物は貧栄養下において光合成装置を調整し、必要最低限の光合成反応を駆動する必要があります。IsiAの多様な発現は生存戦略の一環であると考えられます。

  • 注1: シアノバクテリア
    • 藍色細菌、あるいは藍藻とも呼ばれ、原核生物に分類されます。単細胞ながら、植物と同じように光合成を行います。 地球上へ生命が誕生した初期に出現し、光合成を通して大気中に酸素を生産し続けた生物です。
  • 注2: 時間分解蛍光分光法
    • パルスレーザーを色素に照射した後、色素から発せられる蛍光の変化をフェムト秒(10-15秒)からピコ秒(10-12秒)の時間分解能で追跡する方法です。光エネルギーを吸収した直後の色素分子の挙動だけではなく、分子が置かれた環境に関するさまざまな物理化学的情報を解析するための非常に有用な分光法です。この手法により、集光性色素タンパク質(注3)の色素分子の役割を明らかにします。
  • 注3: 集光性色素タンパク質
    • クロロフィルやカロテノイドなどの色素を結合した、太陽光エネルギーを集める役割を持つタンパク質です。 光合成生物の種類に応じて異なる集光性色素タンパク質が存在します。
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