神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2021.03.16

化学専攻の秋本誠志准教授らの研究グループが、超強光ストレス環境下で微細藻類シアノバクテリアが生育するために必要とする遺伝子変異を発見しました。

 大阪大学大学院情報科学研究科の清水浩教授・戸谷吉博准教授と神戸大学大学院理学研究科の秋本誠志准教授の研究グループは、微細藻類シアノバクテリアの超強光ストレス(注1)耐性株を指向性進化(注2)実験によって獲得し、この細胞が強光ストレス環境下で生育するための鍵因子を世界で初めて明らかにしました。
 シアノバクテリアは、光合成によって光を利用してエネルギーを作り出し、大気中の二酸化炭素から燃料やポリマー素材など様々な有用物質を作り出すことができる魅力的な微生物です。しかし、真夏の太陽光のような強すぎる光は細胞にダメージを与え、細胞が生育できなくなるという課題がありました。光合成を効率化するには強い光で培養する必要がありますが、強すぎる光では細胞が増殖できません。指向性進化の手法を利用することで、超強光下でも生育可能な進化株を取得し、超強光条件で生育するための鍵因子(2つの遺伝子の変異)を発見しました。これにより同定した遺伝子変異をシアノバクテリアの有用物質生産菌に導入することで、超強光下における有用物質生産の高効率化への応用が期待されます。

  • 注1:強光ストレス
     消費能力を超えた余剰な光エネルギーを吸収すると、光合成の効率が低下するだけでなく細胞が損傷を受けます。シアノバクテリアは集光アンテナの縮小など、ある程度の適応機能を持つことが知られています。
  • 注2:指向性進化
     細胞は増殖する過程で一定の確率で突然変異を生み集団の多様性を作り出します。目的とする特性と細胞増殖が連動するように培養環境を設計し、継代培養を繰り返すことで、集団の中に目的特性を持った個体が選抜されるように進化させる方法です。
 本研究成果は3月16日19時(日本時間)、米国科学誌「Communications Biology」に掲載されました。
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