神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2021.04.13

生物学専攻の末次健司准教授らの研究グループが、ラン科植物「サギソウ」の遺伝的撹乱の実態を解明し、その成果がBiodiversity and Conservation誌に掲載されました。

 生物学専攻の末次健司准教授と兵庫県立大学の中浜直之講師らの研究グループが、野生のラン科植物「サギソウ」の生育地の一部で、栽培品種もしくは栽培品種との交雑個体が野外で見つかったことを明らかにしました。つまりサギソウ野生集団で遺伝的撹乱 (遺伝子汚染) が起きていたことを解明しました。
 サギソウは湿地などに生育する植物で、花の美しさから園芸植物として人気があります。一方で、生育地である湿地の減少や過度な採集により減少傾向にあり、絶滅が危惧されています。サギソウの保全手段として、植物の植え戻しがあげられますが、もしも地域の遺伝子情報を無視して植え戻しがされた場合、遺伝的撹乱が生じる恐れがあります。本研究では、兵庫県内のサギソウ生育地33か所と姫路市立手柄山温室植物園で栽培されている栽培株8品種から遺伝解析を実施することで、兵庫県内のサギソウの遺伝的撹乱の実態を評価しました。その結果、5つの生育地において遺伝的撹乱が起きていることがわかりました。
 本研究は、ほとんど実態が不明であった国内の植物の遺伝的撹乱の実態を解明した重要な成果といえ、今後の遺伝構造を無視した埋め戻し活動の抑止力として働くことが期待されます。本研究成果は2021年4月7日に、国際科学誌「Biodiversity and Conservation」の電子版に掲載されました。
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