神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2021.05.19

惑星学専攻の保井みなみ講師らの研究グループが、衝突残留熱によって小惑星上で水質変成や有機物合成が起こり得ることを、室内衝突実験で明らかにしました。

 地球生命の誕生に必要不可欠な水や有機物は、彗星や小惑星の衝突によってもたらされたと考えられています。小惑星由来の隕石は水があった証拠である水質変成(注1)を受けた有機物が発見されていますが、それらの合成には熱源が必要です。近年、その有力候補の1つとして、小天体の衝突によって発生する衝突残留熱が注目されています。しかし、実験的にその可能性を検討した例はありませんでした。
 惑星学専攻の保井みなみ講師、田澤拓(研究当時:博士前期課程2年)、橋本涼平(研究当時:学部4年生)、荒川政彦教授、JAXA国際宇宙探査センターの小川和律主任研究開発員(研究当時:惑星学専攻技術専門職員)は、小惑星を模擬した石膏標的を用いて1~5km/sの高速度衝突実験を行い、形成されるクレーター周囲の衝突後の温度分布を計測しました。その結果、衝突点から熱電対までの距離をクレーター半径で規格化した距離を用いることで、最高到達温度と加熱継続時間の衝突条件による変化を整理し、経験則を確立しました。その経験則を組み込んで熱伝導モデル計算を行った結果、小天体の衝突によって発生した衝突残留熱によって、水質変成や有機物の合成が小惑星表面で起こる可能性があることを示し、小惑星で水質変成や有機物合成が起こる環境が時間的・空間的に大幅に広がることがわかりました。この研究成果から、地球の水や生命の原材料をもたらした可能性のある天体の候補が格段に増えることが期待されます。
 この研究成果は、5月18日に、英国科学誌Communications Earth and Environment(Nature Publishing Group)に掲載されました。
 詳しくはこちらをご覧下さい。

注1 水質変成:岩石と水の化学反応によって、その岩石を構成する鉱物の種類が変化すること

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