神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2021.06.22

生物学専攻の佐倉緑准教授・佐藤拓哉准教授らの研究グループは、ハリガネムシ類に寄生されたカマキリが自ら川や池に飛び込む仕組みの一端を解明し、その成果がCurrent Biology誌に掲載されました。

 寄生生物の中には、自らの利益のために、宿主の行動を操作する種が多くいます。その代表例として、寄生生物のハリガネムシ類は、森林や草原で暮らす宿主(カマキリや直翅類等)の体内で成虫になると、自らが繁殖をする水辺に戻るために、宿主を操って川や池に入水させてしまいます。これまで、ハリガネムシの宿主は、水面からの反射光の明るさ(光強度)に引き寄せられて入水すると指摘されていました。しかし、川や池以外にも、明るい環境は多くあります。そのため、単純な明るさへの誘引だけでは、入水行動がなぜ生じるのかを説明できませんでした。
 光の性質の一つに、電磁波の振動方向に偏りのある偏光があります。中でも、水面の反射光は、水平偏光を多く含んでいます。今回、生物学専攻の大林奈園(研究当時:博士前期課程2年)・佐倉緑准教授・佐藤拓哉准教授、弘前大学の岩谷靖准教授、奈良女子大学の保智己教授、およびNational Changhua University of Education のChiu博士からなる国際研究グループは、ハリガネムシ類に感染したカマキリでは、水面から強く反射される水平偏光への正の走性が高まり、入水行動に至ることを発見しました。この成果は、行動操作の標的となる光受容システムを特定するものであり、その仕組み解明へ向けた研究を前進させます。
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