神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2021.07.16

生物学専攻(内海域環境教育研究センター主配置)の奥田昇教授を代表とする国際共同研究チームは、河川生態系の生物多様性の低下をもたらす人為駆動因を明らかにし、ECOSPHERE誌で発表しました。

 地球上に生きるさまざまな生物の命を守り、多様な生物から成る豊かな自然の恩恵を人間が受け続けるため、国連は17の持続可能な開発目標の15番目に生物多様性の損失の阻止をあげています。生物多様性の著しい低下が起こりがちなのが、流域の人間活動の影響を受けやすい河川の生態系です。河川の生物多様性を回復するには、流域で営まれる社会・経済活動が生物多様性にどのような影響を及ぼすか評価し、その評価に基づいて改善策を探ることが役に立ちます。
 そうした中、総合地球環境学研究所を中心とした日本・台湾・フィリピンの国際共同研究チームは、琵琶湖の最大流入河川である野洲川を対象とした大規模な生物多様性観測調査を実施し、灌漑期に水田から排出される濁水に含まれる懸濁態リンが河川の底生動物の多様性を低下させる主要因であることを明らかにしました。この結果は、水田自体が生物多様性の低下を招くことを示すわけではありません。水田の生産効率を上げるために灌漑様式が近代化され、水を豊富に使えるようになって濁水発生量が増加したことにより、生物多様性が低下したと考えられるため、環境に配慮した農業を普及させれば回復すると期待されます。
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