神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2022.06.21

生物学専攻の末次健司准教授と卒業生の阿部裕亮さんが、ラン科植物「サギソウ」のギザギザの花びらの適応的意義を解明し、その成果を Ecology 誌に発表しました。

 野生ランであるサギソウは、純白の花びらの形が空を舞う白鷺を思わせるため「鷺草」と呼ばれ、古くから人々に愛されてきました。しかし今日にいたるまでサギソウの花を特徴づけるギザギザの形の適応的意義は不明なままでした。そこで神戸大学大学院理学研究科の末次健司准教授、阿部裕亮氏 (令和3年度修士課程修了) らの研究グループは、この謎を明らかにすべく「自生地におけるギザギザの切除実験」と「花粉を運んでくれる昆虫の詳細な行動観察」を3年間にわたり行いました。その結果、サギソウ自生地でギザギザを切除した個体は、切除しなかった個体と比べ、果実1個あたりの健全な種子の数が低下することがわかりました。さらにサギソウの主要な送粉者であるスズメガが、サギソウの蜜を吸う際に通常はギザギザ部分に中脚をかけて掴まる一方で、ギザギザを切除するとしばしば花びらに脚をかけることができなくなることがわかりました。つまりギザギザは花粉を運ぶスズメガの支えととして機能していたことがわかりました。スズメガは、主にホバリングしながら蜜を吸うと考えられてきました。本研究は、サギソウがスズメガを花粉の運び手として利用しているにも関わらず、その目立つギザギザが視覚的なガイドというよりむしろスズメガの吸蜜中に花を掴むための支えとして進化してきたことを示唆する重要な成果といえます。

 本研究成果は2022年6月21日に、国際科学誌「Ecology」の電子版に掲載されました。
詳しくはこちらのページをご覧ください。

ニュース一覧