神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2022.11.30

生物学専攻の末次健司教授が、新種の光合成をやめた植物「キリシマギンリョウソウ」を発見し、その成果をJournal of Plant Research誌に発表しました。

 植物を定義づける重要な形質として「光合成」がありますが、中には光合成をやめ他の生物から炭素源を含む養分を略奪して生活する「光合成をやめた植物」が存在します。このような植物の中で里山のような身近な環境でもよく見られ、私達も親しみ深い植物として「ギンリョウソウ」があります。

 このギンリョウソウは、日本全国のみならず、東南アジア、中国、台湾、ヒマラヤ、ロシアと広範囲に分布していますが、世界的に見てもギンリョウソウ属は、1種のみだと考えられてきました。生物学専攻の末次健司教授らの研究グループは、海外で採取された個体を含む多数の「ギンリョウソウ」を収集し、形態、開花時期、寄生相手の菌類、植物本体のDNA分析などの多角的な視点から「ギンリョウソウ」の分類を再検討しました。その結果、「ギンリョウソウ」の中に名前がついていない種が含まれることを解明し、最初の発見場所である霧島の名を冠し「キリシマギンリョウソウ」と命名しました。またキリシマギンリョウソウは、寄生相手である菌類の種類を変えることで、ギンリョウソウから種分化したことが示唆されました。ギンリョウソウは、日本で広く親しまれている種で、文学などでも度々モチーフとして登場しています。今回発見された新種は、花びらが薄紅色でガラス細工のような幻想的な姿であることも相まって、新種の「ギンリョウソウ」の発見は、一般の方々の興味も引くものと思われます。またギンリョウソウそのものは「ありふれた種」ですが、キリシマギンリョウソウは個体数が少なく、絶滅が危惧されています。新種と特定したことで、保全の重要性が周知されると期待されます。

 本研究成果は2022年11月30日に、国際科学誌「Journal of Plant Research」の電子版に掲載されました。 詳しくはこちらのページをご覧ください。

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