News Release
2024.08.08
生物学専攻の末次健司教授が、イワタバコ科の低木「ヤマビワソウ」の小さな種子がバッタの仲間であるカマドウマによって食べられ糞とともに散布されることを発見し、その成果をPlants, People, Planet誌に発表しました。
自力で移動できない植物にとって、種子を遠くに運ぶことは自身の分布を拡大する上で非常に重要です。このため、多くの植物は鳥や哺乳類などの動物に種子を果肉と一緒に食べてもらい、種子が消化されずに排泄されることで自力では届かない場所まで種子を運んでもらっています。このような働きをする動物は種子散布者と呼ばれますが、前述の通り、種子散布者の多くは鳥や哺乳類であり、昆虫などの無脊椎動物が関わることは稀です。
そのような中、末次健司教授の研究グループは、イワタバコ科の低木「ヤマビワソウ」の埃のように小さな種子(埃種子)がバッタやキリギリスの仲間であるカマドウマによって食べられ、その糞(ふん)とともに散布されることを明らかにしました。光合成で自活する植物において、昆虫が果実を食べ、中に含まれる種子が糞の形で散布される例はニュージーランド以外ではこれまで知られていませんでした。今回の研究は、こうした種子散布様式が今まで考えられていた以上に普遍的なものである可能性を示唆するものです。
また、これまで埃種子の進化については、種子に胚乳などの養分を蓄える必要がなくなる寄生能力の獲得が重要視されていましたが、今回の研究で、ヤマビワソウが独立栄養性であるにもかかわらず、埃種子をつけることが確認されました。昆虫を種子の運び手として利用するためには、昆虫の消化管を通過できるほど細かな種子をつける必要があることを併せて考えると、昆虫を種子散布者として採用したことそのものが小さな種子の進化の原動力となった可能性もあります。
本研究成果は、8月8日に、国際誌「Plants, People, Planet」にオンライン掲載されました。
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