研究関連
生物学専攻の末次健司教授は、自身が以前に新種として報告した「咲かない花をつける植物」の誕生の謎を明らかにし、その成果をProceedings of the Royal Society B 誌に発表しました
2025/05/21
自殖のみによって繁殖する戦略は、有害な遺伝子の蓄積などによる長期的なリスクを伴うことから、進化論を提唱したチャールズ・ダーウィンもその存続可能性には 強い疑念を示していました。一方で、末次教授はこれまでに、つぼみのまま開花せず、自家受粉のみで繁殖する複数のラン科植物の新種を発見しています。
本研究では、そうした「咲かない花」をもつ植物に注目し、遺伝解析を通じて、「本当に自殖しか行っていないのか」「このような生活様式は、いかなる条件下で進化したのか」といった問いに取り組みました。 その結果、咲かない花をもつ植物は、完全に自殖のみに依存して繁殖していることが確認されました。 さらに、花を咲かせている近縁種においても遺伝的多様性が極めて低く、自殖型の植物に共通する特異な遺伝構造が見られることが明らかになりました。 これらの結果は、花を咲かせていても他殖の効果がほとんど期待できない条件下で、確実に繁殖できる自殖が選択され、 結果として「咲かない花」への進化が促された可能性を示唆しています。
一方で、これらの種が花を咲かせなくなってからは、最長でもおよそ2000年程度しか経過しておらず、進化的にはごく若い分類群であることも明らかになりました。 本研究は、「花を咲かせない」という極端な繁殖様式が、どのようにして誕生し、どのような条件下で存続し得るのかを明らかにしたものであり、 植物の繁殖戦略に関する従来の常識を問い直す重要な成果といえます。詳しくはこちらのページをご覧ください。 詳しくはこちらのページをご覧ください。
こ本論文は、2025年5月21日午前8時(日本時間)に 国際誌「Proceedings of the Royal Society B」に掲載されました。