研究関連

生物学専攻の石崎公庸教授と名古屋大学との共同研究による、植物が細胞の分裂方向をそろえる仕組みに関する研究成果がCurrent Biology誌に掲載されました

2025/09/16

 細胞分裂の際には、「紡錘体」と呼ばれる構造が染色体を正確に分配し、2つの細胞を生み出します。紡錘体の向きは、細胞がどの位置で分裂するかを決定し、さらに細胞の機能や運命にも大きな影響を及ぼします。 動物細胞では、「中心体」と呼ばれる構造が紡錘体の方向を制御します。しかし、陸上植物の多くの細胞には中心体が存在しません。植物細胞では、染色体分離後に「細胞板」を形成することで新しい細胞が生じるため、 細胞板の向きを制御することが細胞分裂の位置決定に不可欠と考えられてきました。それにもかかわらず、紡錘体の向きを決める仕組みや、その意義については長らく不明のままでした。

 このたび、生物学専攻の石崎公庸教授は、名古屋大学大学院理学研究科の佐々木武馬助教・小田祥久教授、岡山大学学術研究院環境生命自然科学学域(理)の本瀬宏康准教授らの研究グループと共同で、 基部陸上植物であるゼニゴケと、被子植物の代表種であるシロイヌナズナを用いて研究を行いました。その結果、細胞分裂時に発現する微小管結合タンパク質「CORD」が、紡錘体の向きを安定させることで、 細胞が正しい方向に分裂できるよう制御していることを発見しました。CORD遺伝子は植物が藻類から陸上植物へと進化する過程で獲得されたと考えられます。本成果は、植物の細胞分裂機構の理解を深めるだけでなく、 植物が陸上へ進出した進化の謎を解き明かす上でも重要な手がかりになると期待されます。本研究成果は米国の科学誌「Current Biology」誌でオンライン公開されました。

 より詳しい解説は神戸大学のプレスリリースをご覧ください。