研究関連
生物学専攻の河島鈴さん(博士課程前期課程)と末次健司教授らの研究グループは、落葉低木「ニワトコ」と、成虫が送粉を担い、幼虫が種子を食べて成長する「ケシキスイ」との送粉共生において、共生関係を安定させるメカニズムを明らかにし、その成果をPlants People Planet 誌に発表しました
2026/03/06
植物が果実を昆虫の“ゆりかご”として提供し、その見返りに送粉サービスを受ける関係では、植物と昆虫の双方が次世代を残すために「種子」を必要とするため、利害の対立が生じやすく、 関係性が不安定になりやすいと考えられてきました。これまで、このような共生を維持する仕組みとして注目されてきたのは、卵が過剰に産みつけられた果実のみを早期に落とし、内部の幼虫を殺す“制裁”と呼ばれる仕組みです。 しかし、この仕組みがすべての系に当てはまるわけではなく、別の安定化メカニズムは十分に解明されていませんでした。
本研究では、落葉低木「ニワトコ」と、成虫が送粉を担い、幼虫が種子を食べて成長する「ケシキスイ」の一種との送粉共生を対象に、共生関係を安定させるメカニズムの解明に取り組みました。 その結果、幼虫が侵入した果実は成熟前にほぼすべて落下する一方で、幼虫は落下までに羽化可能な段階まで成長していることが確認されました。 つまり、果実の落下は幼虫にとって致命的ではないことが分かりました。また、この果実の早期落下は植物側にとっても、質の低い果実への投資を早期に打ち切ることにつながり、 資源配分の面で有利に働いていることが示されました。
以上の結果から、ニワトコとケシキスイの関係では、果実の落下が両者に利益をもたらす重要な役割を果たしていることが明らかになりました。 果実の落下が送粉者と植物の双方の利益につながることを実証的に示したのは本研究が初めてであり、進化的に不安定と考えられてきた共生関係が、 どのように安定して維持されているのかを示す新たな仕組みを提示した重要な成果といえます。 詳しくはこちらのページをご覧ください。