研究関連

末次健司教授らの研究グループは、つる植物「カラスキバサンキライ」と、幼虫が花を“ゆりかご”として利用する「タマバエ」との送粉共生において、単一の香り成分がこの助け合いを支える鍵として機能していることを明らかにし、その成果をCurrent Biology誌に発表しました

2026/04/07

 昆虫が花を産卵や幼虫の発育の場として利用しながら送粉も担う関係では、植物は受粉という利益を得る一方で、 幼虫による利用というコストも負うため、両者の利害は衝突しやすいことが知られています。 このような送粉共生が安定して維持されるには、植物側の負担が過度に大きくならない仕組みが必要ですが、 その具体的なメカニズムはこれまでほとんど分かっていませんでした。

 末次教授らは、5島にわたる野外調査と化学分析、さらに合成した香り成分を用いた野外実験によって、 この共生の実態を詳しく調べました。その結果、タマバエはまず雄花に集まり、産卵の過程で花粉を体に付けた後、 数時間遅れて開く雌花にも訪れて受粉を成立させていることが分かりました。 一方で、幼虫がよく育つのは主に落下した雄花だけであり、雌花では産卵頻度が低いうえ、 ふ化した幼虫も将来種子になる胚珠を食べることなく死亡する場合が多いことが確認されました。 また、雄花と雌花はいずれもジヒドロエデュランIという珍しい香り物質のみをほぼ単独で放出しており、 この物質だけでタマバエの雌を強く引き寄せることも示されました。

 これらの結果から、カラスキバサンキライでは、雄花と雌花がタマバエには区別できない共通の香りで送粉者を誘引し、 開花時刻のずれによって効率よく花粉を運ばせるとともに、幼虫の発育を主に雄花に集中させることで、 安定した共生関係が成り立っていることが明らかになりました。 本研究は、単一の化学物質が高度に特殊化した助け合いを支えていることを示した重要な成果です。 詳しくはこちらのページをご覧ください。