神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

生物間相互作用の連鎖を紐解く

生物学科・生物学専攻 生態・種分化教育研究分野 佐藤 拓哉 准教授

佐藤 拓哉 准教授  自然界に生きる生物たちが織りなす複雑な相互作用は、生物群集をどのように形成し、生態系の機能を担っているのでしょうか?この疑問に答えるために、私たちの研究グループは、個体間、個体群間、および生態系間でなされる多様な生物間相互作用を野外観測や大規模野外実験によって紐解くことを目指しています。

 一例として、渓流釣りなどでお馴染みのアマゴやイワナ(サケ科魚類)は、水生生物でありながら、森林から供給される陸生昆虫類に大きく餌資源を依存して個体群を維持しています。一方、陸生昆虫類はどのようにして河川に供給されているのでしょうか?これまでの研究はすべて、「落下」昆虫類としていましたが、本当でしょうか?

佐藤 拓哉 准教授 佐藤 拓哉 准教授  このシンプルな疑問について、私はハリガネムシ類(類線形虫類)による宿主の行動操作(河川への飛び込み行動の生起)が、陸生昆虫類(カマドウマ・キリギリス類)の河川への供給量を季節的に増大させていることを発見しました。そこで、大規模野外操作実験によってハリガネムシ類の主な宿主であるカマドウマ類の河川への飛込み量を低下させたところ、サケ科魚類は水生昆虫群集への捕食圧を増大させ、間接的に藻類の現存量の増大や落葉破砕速度の低下を引き起こしました。これまで見過されてきた寄生生物が、宿主やそれと相互作用する他種との関係の改変を通して、生物群集の形成過程や生態系機能にまで影響を及ぼしていたのです。

 ハリガネムシ類は世界中に生息しており、その種数は2000 種を超えるとも言われています。そこで現在は、ハリガネムシ類の多様性はどのように維持されているのか?ハリガネムシ類とその宿主の多様な関係は、森林と河川の相互作用の強さや季節動態をどのように規定しているのか?といった点に興味をもって、研究室のメンバーや全国各地の共同研究者とともに研究を進めています。

研究トピックス一覧