神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

光を当てると一酸化窒素を放出する有機分子

化学科・化学専攻 有機反応化学分野 松原 亮介 准教授

松原 亮介 准教授  一酸化窒素は窒素原子と酸素原子から成る分子量30 の小分子です。世界中での研究により、この有機分子は非常に小さい分子でありながらとても重要な生理機能を有していることが分かってきました。たとえば、心臓の血管が狭窄することで発症する狭心症の発作が起こった時、ニトログリセリンという薬を摂取すると収まります。この時、ニトログリセリンから放出される一酸化窒素が血管拡張を引き起こしていることが分かっています。このように、医薬分野において一酸化窒素はとても重要なターゲット分子として認識されています。

 我たちの研究の目的は、この一酸化窒素を、好きな時に好きな場所で好きな量だけ放出する有機分子を創製することです。

松原 亮介 准教授  それができたらいったい何ができるでしょうか。たとえば体のある部分の血管のみ拡張させることができるでしょう。そうなれば、望まない部分での生理応答、すなわち副作用が大幅に軽減されるはずです。さらに、一酸化窒素は血管拡張作用だけではなく、神経細胞の長期記憶にも関わっていることが提唱されています。一酸化窒素の放出をコントロールできるようになれば、神経細胞の異常がもたらすアルツハイマー病やてんかんといった病気の病理解明、治療に役立つことも期待できると思います。

 これらの目的に向かって、私たちの研究室では、フロキサンという分子に注目して研究を行っています。合成という観点からいうと、フロキサンは作ることも修飾することも難しいなかなか“ 手のかかる” 分子です。合成反応の条件を少し過酷にしてしまうとすぐに分解してしまいます。それでも、なんとか穏やかな反応条件を見つけて合成し、いろいろな物性を測定してみました。その検討の中から私たちが関心を持ったことは、フロキサンに対して光を照射すると、普通なら不安定である分子がきれいに合成できるという現象でした。不安定であれば、分解も早く、そこから一酸化窒素が出てくるかもしれない、そのような発想にたどり着きました。

 最近になりようやくその原石となる分子の合成をすることができました。現在も、光刺激を与えた時だけ一酸化窒素を放出するような分子を作れないかと毎日試行錯誤しながら研究を続けています。

研究トピックス一覧