神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

ミクロの理論で宇宙を理解する&宇宙を使ってミクロの世界を探る

物理学科・物理学専攻 宇宙論分野 早田 次郎 教授

早田 次郎 教授  下の上2枚の写真のように、宇宙には、星や銀河、銀河団といった豊かな構造があることはよく知られています。このような美しい構造は、宇宙が誕生したばかりの頃の僅かな質量密度のゆらぎが重力によって増幅されてできたと考えられています。そうだとすると、その最初の密度ゆらぎがどのようにして生まれたかが気になります。インフレーション理論は、この豊かな宇宙の構造が宇宙初期の量子ゆらぎからつくられたと予言しています。左下の写真はインフレーションから宇宙の大規模構造が創られる過程のイメージ図です。 

 このように宇宙というマクロな世界の構造が、量子力学が記述するミクロな世界と結びつく理由は宇宙が膨張しているからです。現在、こんなに大きな宇宙も、大昔は素粒子と同じくらいに小さかったと考えられていて、そのころに起きたことが現在の宇宙の構造の起源となっているのです。我々は、この事実を利用してミクロの世界のことを知りたいと思っています。望遠鏡で遠くを見るというのは、昔の光を見ること、したがって、昔の宇宙を見ていることになるからです。それはまた、小さかった時代の宇宙を見ることを意味しています。つまり、望遠鏡は超高性能顕微鏡の役割を果たすのです。現在、最も遠くを見ることのできる望遠鏡は、宇宙マイクロ波背景放射観測衛星です。宇宙には130 億年前の熱かった時代の名残である電磁波が満ちていて、宇宙マイクロ波背景放射(CMB)と呼ばれています。この電磁波観測を始めとして、様々な観測によってミクロな世界を研究しています。右下のグラフは我々が最近発見した非等方インフレーション宇宙モデルの安定性を示すものです。力を媒介するゲージ場が宇宙初期で重要な働きをすることを世界に先駆けて発見しました。このように、我々の研究室では素粒子理論を使って宇宙論的な新たな描像を明らかにすることや、宇宙の精密観測から素粒子理論の記述するミクロな世界の情報を得るという双方向の研究を行っています。

早田 次郎 教授  我々が研究対象としているのは宇宙の大規模構造の起源だけではありません。我々の身の回りにあるバリオンと呼ばれる物質の起源もそうです。これは粒子と反粒子の対称性が破れることによって説明できると信じられています。素粒子理論と宇宙論の関わりは深いわけです。また、暗黒物質や暗黒エネルギーの解明も目指しています。これはアインシュタインの重力理論を修正することで説明できるかもしれません。ブラックホールの物理学も研究しています。宇宙論は究極の雑学です。研究室の構成員のそれぞれが柔軟な思考でアイデアを出し、自ら考え、個々の研究を行っています。そのような雰囲気のなかから、皆で新たな研究テーマを創発していこうというのが我々の研究室のモットーです。

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