神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

太陽光を化学エネルギーに換える

化学科・化学専攻 反応物理化学教育研究分野 立川 貴士 准教授

立川 貴士 准教授  地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーをもし100%利用できるとしたら、世界の年間消費エネルギーをわずか1 時間でまかなうことができるといわれています。このような膨大で、かつ枯渇する心配がないエネルギー源を有効に利用することができれば、人類の抱える環境・エネルギー問題を解決することができるはずです。太陽光を化学エネルギーに換える技術のひとつに、二酸化炭素を排出せずに、クリーンなエネルギーである水素を太陽光と水からつくり出すことができる「光触媒」があります。半導体である光触媒に光を照射すると、内部に電子と正孔(電子が抜けた孔)が生じます。このうちの電子が水中の水素イオンを還元することで水素を発生し、残った正孔は水を酸化することで酸素を発生します。植物が光合成の明反応で行っている、葉緑素(クロロフィル)が光エネルギーを吸収し、水分子を酸素、水素イオン、電子に分解する光化学反応とよく似ています。

 私たちのグループでは、光触媒のどこで、どのような反応が起こっているのかを実験によって明らかにすることで、より高活性な光触媒の開発につながるヒントを探し求めています。例えば、1mmの1000分の1以下の大きさの微粒子上で起こる光触媒反応を、1分子レベルの感度を持つ蛍光顕微鏡を用いて直接観察することで、電子と正孔が別々の場所で反応することを世界で初めて発見しました。独自の装置を開発し、誰も見たことのない現象を見つけ、世界に向けて発信することは、とてもエキサイティングなことです。

 新しい物質・材料をつくりだすことも化学の醍醐味のひとつです。例えば、上で述べた発見をもとに、新しい光触媒材料を開発しています。写真は、私たちの身の回りにある赤錆(酸化鉄)を材料としてつくられた光触媒電極が水を分解する様子を示しています。太陽光を照射することで、光触媒電極から酸素が、白金線から水素が気泡として生じています。安価な材料で効率の高い光触媒をつくることができれば、燃料やプラスチックなどを作り出す「人工光合成」の実現も夢ではありません。このように、私たちは1 分子化学という新しい学問領域の確立と光を有効に利用できる機能性材料の開発を目指して日々研究を行っています。

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