神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

非線形可積分系の応用数理

数学科・数学専攻 関数方程式教育研究分野 太田 泰広 教授

太田 泰広 教授  線形代数、線形応答、線形計画など、「線形」がつく言葉はたくさんあります。簡単に言えば線形とは、出力の大きさが入力の大きさに比例することを意味します。一方、入力と出力の間に比例関係(線形関係)がない場合には「非線形」と言います。私たちの身の回りにあるものや現象のほとんどは非線形系や非線形現象です。例えば、海岸に打ち寄せる波の運動や道路を往き交う車の流れなどは非線形な方程式で記述され、ある時刻での状態が分かってもその後の変化を予測することは困難です。一般に非線形系は線形系に比べて解析が難しく、通常は限定的な知見しか得られないのですが、可積分系と呼ばれる非線形系の場合には、様々な数学的手法を用いることによって具体的な結果を導くことが可能です。

 私は非線形可積分系の理論を、物理学や工学の様々な問題に応用する研究を行っています。左下の図は、水面波にわずかな擾乱が加わることによってエネルギーの局在構造が現れた状態を描いたもので、入力の微小変化が非線形効果によって出力の大きな変化をもたらす現
象を捉えています。右下は流体中の定常渦列の図で、可積分な渦度方程式の厳密解から渦度分布を求めることができています。最近は、ラグランジュ座標の離散化に基づいた高精度数値計算スキームの構成について研究しています。具体的に厳密な結果が得られることに加え、様々な応用があることはこの研究分野の魅力の一つとなっています。

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