神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2023.10.11

生物学専攻の末次健司教授らの研究グループは、飛べない昆虫「ナナフシ」の長距離分散の証拠を遺伝解析により発見し、その成果を Proceedings of the Royal Society B誌に発表しました。

 末次健司教授らの研究グループは、翅がない昆虫であるナナフシモドキ(以下ナナフシ)の全国的な遺伝構造を調査し、 ナナフシが鳥に食べられることで長距離分散していることを強く示唆する研究結果を得ました。

 以前、末次教授らは、ナナフシの卵が鳥に食べられた際、一部の卵は無傷で排泄され、その後ふ化することを実験的に明らかにしていました。 しかしこのような現象は低頻度でしか起こらないため、自然条件下で実際に分布拡大に寄与しているのかについては未解明なままでした。 このため、末次教授らは、今回新たにナナフシを日本全国から採集し、その遺伝構造を詳細に調査することで、自然界で実際に長距離分散が起きているかを検討しました。

 その結果、最大で683km離れた場所で同一のミトコンドリアの配列が確認されるなど、鳥による長距離分散を仮定しなければ説明できないパターンが多数発見されました。 従来、鳥と昆虫は捕食と被食の関係にあるとされ、鳥に捕食されれば昆虫は子孫もろとも生存の可能性を失うというのが一般的な考えでした。 しかし、以前の実験結果と今回の成果から、移動能力が乏しいナナフシのような昆虫では、鳥に食べられることで、むしろ自身で成しえなかったほどの長距離分散が起こりうることが示されました。

 本研究成果は、10月11日に、国際誌「Proceedings of the Royal Society B」にオンライン掲載されました。 詳しくはこちらのページをご覧ください。

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