神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

コンピュータシミュレーションを用いて銀河の形成過程を解き明かしたい

惑星学科・惑星学専攻 計算惑星学教育研究 斎藤 貴之 准教授

斎藤 貴之 准教授  私たちが空を見上げると、そこが十分街明かりから離れた暗い場所であれば、無数の星を目にすることができます。この星空の中にひときわ星が密集した帯状の領域があり、これを私たちは天の川と呼んでいます(図1)。この構造は、私たちが数千億個の恒星からなる円盤銀河-天の川銀河- の中にいるために目にする構造です(図2)。銀河円盤は数億年をかけて一回転し、その中には腕構造や棒状構造など複雑な構造を発達させ、今なお新しい星を生み出しながら進化しています。また、星が作る円盤のさらに10倍程度まで、光では見ることのできない暗黒物質が広がっていると考えられています。

 では銀河はどのように形成されたのでしょうか?現在の標準的な理解では、私たちの住む宇宙は銀河より遙かに小さい質量の天体が最初に形成され、やがてそれらが合体して銀河を形成する階層的構造形成宇宙だと考えられています。この階層的構造形成宇宙におけるに銀河の形成過程は、端的に言うと原始銀河同士の合体により現在の銀河の母体が形成され、その後比較的長い時間スケールをもつガス降着により銀河円盤が形成されるという二段階に分けることができます。このバランスにより、円盤銀河、楕円銀河などの銀河の多様性が生み出されたと考えられてます。実際の銀河の形成過程は、重力、流体力学、放射冷却、星形成など多様な物理現象が絡み合って極めて複雑なため、私はコンピュータシミュレーションを用いてこの問題に取り組んでいます。

 図3は、私が先頃おこなった銀河形成シミュレーションを映像化したものです。宇宙が現在のサイズの100分の1だった頃から開始し、暗黒物質、ガス、およびガスから生まれた星の進化を解きました。先に述べた様な過程を経て円盤銀河が形成されたことが分かります。現在はこのようなシミュレーションから、銀河がどのようにしてできたのか、銀河の多様性はどのように生まれたのかについての研究をおこなっています。加えて、元素の起源や星・惑星形成、そして銀河内可住域(銀河内における生命の誕生に適した環境)の研究などに応用しようとしているところです。

 これら研究に加えて、最近では(私の主観によると)もっともっと小さなスケールになる、月の形成や、マントル対流のシミュレーションなどの研究も展開しています。宇宙では様々な階層が有機的に結びつきながら進化しています。究極の目標は銀河から惑星まで、そのすべてを一つのシミュレーション上で扱いたいと考えています。

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