神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

「シャジクモ藻類」の仲間を用いたさまざまな生物多様性研究

生物学科・生物学専攻 進化・系統教育研究分野 坂山 英俊 准教授

坂山 英俊 准教授  わたしの研究室では、淡水藻類の種レベルの分類から絶滅危惧種の保全までフィールドワークを基本とした研究を行っています。また、陸上植物の起源と進化を探るモデル系統群として最近特に注目されている「シャジクモ藻類」を用いて、ゲノム進化、多細胞体制の進化、有性生殖の進化などを探る研究も実施しています。

 最近のフィールドワークに基づく研究により、国指定天然記念物であり、国内では徳島県の1地点でのみ生育が確認されていた大型淡水藻類の希少種シラタマモ(Lamprothamnium succinctum)(図1)の産地を、国内から新たに5地点発見しました。また、本種における産地間での遺伝的な差異を、葉緑体DNA塩基配列による解析で明らかにしました。本種は環境省版レッドリストにおいて絶滅危惧I類に指定されていることから、本研究の成果は、本種の希少性や保全価値を再評価する際の重要な基礎資料になると考えられます。また、陸上植物の姉妹群であるホシミドロ藻綱に属するアオミドロ属において、ヘテロタリックの種(Spirogyra fluviatilis; 別個体につくられた雌雄の配偶子間でのみ接合するタイプ)(図1)の存在を世界で初めて明らかにしました。

 ゲノム進化の研究においては、国際共同研究により、陸上植物に近縁なシャジクモ藻類の中で最も複雑な体の構造を持つシャジクモ(Chara braunii)の概要ゲノムを解読し、他の藻類および陸上植物との比較により、シャジクモの系統と陸上植物の系統の分岐前後における遺伝子レベルの進化の一端を明らかにしました(図2)。シャジクモの概要ゲノムは、植物の陸上での生活に重要と考えられる多くの陸上植物的な特徴がシャジクモ藻類にあること、これにより、最古の陸上植物ができる以前にそういった陸上植物的な特徴が獲得されたことを明らかにしました。このシャジクモの概要ゲノムは、さらに多くの陸上植物に見られる遺伝子の進化的解析において参照されるとともに、シャジクモでの進化遺伝学的解析の基盤になると期待されます。

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