神戸大学 大学院理学研究科・理学部

研究トピックス

海から、陸から、地球のヒミツを探る

惑星学科・惑星学専攻 地質学教育研究分野 山本 由弦 教授

山本 由弦 教授  私たちが住んでいる地球は、太陽系のほかの惑星たちとほぼ同時に、同じように形成されました。しかし、現在の地球は、それらと大きく異なるいくつもの特徴をもっています。中でも重要なのは、「プレートテクトニクス」の存在です。海洋プレートが沈み込み、物質や温度の循環が起こるからこそ、生命にとって有害な宇宙線を遮る十分な強度の地球磁場が生まれ、惑星表層を生命活動や水の存在に適した温度に保つことができます。一方で、私たちに恩恵をもたらすその特徴は、地震や火山噴火、海底地すべりによる津波など、大きな脅威ももたらします。私たちは、海洋プレートの沈み込みに伴うさまざまな地質現象に注目した研究を行っています。いわば、「地球はなぜ地球であるのか?」、地球のヒミツを解き明かすための研究を行っています。

 研究のためには、重要な2つのアプローチがあります。海洋掘削と陸上の露頭調査です。前者は、日・米・欧が中心となって進めている国際深海科学掘削計画(IODP)であり、私たちは地球深部探査船「ちきゅう」や「Joides Resolution」を使って、まさにプレートが沈み込んで地震や火山、海底地すべりを起こそうとしている場所から直接試料を採取するほか、そこの温度や応力、地質構造を直接観測しています。一方で、海洋掘削は時間もお金もかかるので、なかなか広範囲に展開できません。そこで、これらと同じ現象を経験した、陸上の地質体を3次元かつ広範囲に研究し、それらを比較・検討することが重要です。このようなプロジェクトは、国内外の多くの大学や研究機関と行う必要があり、神戸大学の学生をはじめ、世界中の友人たちと日々研究を行っています。

 最近のトピックスは、沈み込み帯の断層運動による「発熱」です。周辺が海水で満たされている環境ではあまり発熱しないだろうと考えられてきましたが、地震時の際に大きくすべる断層運動の摩擦によって発熱することが、海洋掘削によって明らかにされてきました。発熱の温度分布から、どの程度の速度でどのくらいすべったのかという地震学に重要な情報を取り出せるようになりました。私たちの最近の研究では、この摩擦発熱によって断層の構成鉱物が変化することで、断層の摩擦特性が変化することが明らかになりました。その変化は、日本列島を始めとするプレート沈み込み帯の形状に大きな影響を与えることが考えられ、ここをシミュレーションで評価しようとしています。今後も世界中の海や露頭に出かけて、地球のヒミツにすこしでも近づきたいと思います。

研究トピックス一覧