神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2023.10.18

生物学専攻の末次健司教授らの研究グループが、マルハナバチの不在環境が、マルハナバチに受粉を託すはずの 「アケボノシュスラン」の進化に与える影響を解明し、その成果をNew Phytologist誌に発表しました

 大陸と陸続きになった歴史を持たない海洋島は、大陸の陸地から完全に隔離されているため、漂着した生物種のみが島の生物相を形成します。 この特性により、海洋島では大陸から遠ざかるほど、定着可能な動植物の種数が減少することが確認されています。

 伊豆諸島は、大陸や日本本土と一度も陸続きになったことがない海洋島で、日本本土における重要な送粉者であるマルハナバチが 分布していないことが大きな特徴です。そこで末次健司教授らは、マルハナバチが主な送粉者であるはずのアケボノシュスランが、 なぜ伊豆諸島の一つである神津島で分布しているのかを詳しく調査しました。その結果、神津島の「アケボノシュスラン」は、 ① 蜜を吸う器官である口吻が短いツチバチに受粉を託すこと、そして ② 送粉者に対応し日本本土のものに比べて、花筒(花が筒状になっている部分)が短くなっていることが分かりました。 さらにDNA分析で、神津島の「アケボノシュスラン」は、短い花筒を持つシュスランとの雑種であることが明らかになりました。 つまりマルハナバチのいない神津島では、「アケボノシュスラン」は、ツチバチに受粉を託すシュスランとの雑種に置き換わっていたのです。

 実は、現在マルハナバチをはじめとする送粉者が世界的に減少しており、大きな問題となっています。 本研究から、マルハナバチが減少あるいは絶滅した場合、マルハナバチに依存していた植物が代わりの送粉者を採用できたとしても、 もともとその送粉者に花粉を運んでもらっていた植物との雑種化が進み、結果として種の多様性が損なわれてしまう危険があることが分かりました。

 本研究成果は、10月18日に、国際誌「New Phytologist」にオンライン掲載されました。
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