神戸大学 大学院理学研究科・理学部

News Release

2024.02.20

生物学専攻の末次健司教授らが、送粉者を「殺す」唯一の植物とされてきたテンナンショウ属の1種において、その主要な送粉者が腐った花序を「育児室」としていることを解明し、Plants, People, Planet誌に発表しました

 ほとんどの植物は花粉や蜜などの報酬を提供し、ハナバチなどの動物に花粉を他の花に運んでもらっています。 こうした一見仲睦まじく見える生物同士の関係ですが、植物の中には、昆虫を騙して花粉を運んでもらうものが存在します。 その中でもテンナンショウは、送粉者の命を犠牲に受粉を達成する唯一の植物として有名でした。

 一方で末次健司教授らの研究グループは、テンナンショウ属のナンゴクウラシマソウの主要な花粉の運び屋(送粉者)であるキノコバエ類の一種 イシタニエナガキノコバエが、腐った花序を「育児室」として利用していることを明らかにしました。 さらに、通常は脱出不可能と考えられていた花序の上部から、このキノコバエが産卵後に脱出できるケースがあることも分かりました。

 本発見は、ナンゴクウラシマソウと主要な送粉者であるキノコバエ類の一種の関係性が、敵対的な関係から助け合いへの移行段階にあることを示唆しています。 本成果は、これまでの植物学の常識であった「テンナンショウの送粉者は何の利益も得ない」という考え方を覆す発見といえます。

 この研究成果は、国際誌「Plants, People, Planet」にて2月20日 午前0時0分(日本時間)にオンライン掲載されました。
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